板倉文インタビュー02
ちゃClub会報37より転載

<Irene> <会社物語> を語るスペシャル版。

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−:まず、今回のアルバム「Irene」のことについてお聞きしたいのですが、
いろんなゲストが参加していますが、参加することになったきっかけというのは?

文:まずサンディは、清水くんがサンセッツを手伝ったのがキッカケで、
何年か前に六本木インクスティックにサンセッツの久保田さんが見に来ていて、
それでその時清水くんをおもしろい人だな...と思ったみたいで、
サンセッツがデモテープを作るときにも清水くんが手伝いに何回か行ってて、
あとレコーディングも手伝ったんじゃないかな?!
まあそんな感じ。
美潮の場合はね、
最初あの曲は日野てる子さんに頼もうとしてて、
「ブンガワン・ソロ」のテープを送ったの。
僕は送ったらだめだって言ったんだけどね(笑)。そしたら
「これから自分のレコーディングを控えた大切な時期ですから。」
って断ってきたの(笑)。
そしてハムザはね、今回「Irene」は土着の歌というのがテーマなの。
生きていて、本物の歌ということで、最初は世界のいろいろな地方のね、
生きている音を取材してきて、
それをアレンジしてやろうと思ったんだけど、
時間がすごくかかるのね。
それで、そういう土着の歌が歌える人が、日本にだれかいないか探してたら、
福岡さん(キリング・タイムのレコードディレクター)が紹介してくれたの。

−:「Irene」のジャケットの絵がすごくいいなと思うんですけど...。

文:あれは Maja Weber っていう人が描いてくれたんだけど、
Maja の旦那さんの Eberhard Weber のファンだったの。
僕が高校生の時かな、
その人が自分のアルバムを出していて、
西ドイツではけっこう売れていたんだけど、
プレーヤーとしては何枚か出していたんだけど、
バンドとしては初めてのレコードで ECM からでたの。
当時 ECM はできたばかりで、Eberhard のジャケットも Maja が描いていて、
他のアーティストのジャケットも Maja が描いていたの。
僕はすごく Maja のファンで、Eberhard に対してもすごくミーハーだったので、
今年 Jan Garbarek が来日したとき見に行って
Eberhard とちょっと話をして、
泊まっているホテルを教えてもらったんだ。
その後、帰って「Irene」に関してベーシックリズムを4曲位録って、
ある段階のテープと今までの何曲かセレクトしたのを持ってホテルまで行ったんだけど、
朝の8時位だったんで、まだ寝ているんじゃないかと思ったからね、
手紙と一緒に渡してもらったの。
そして何週間かして後に返事が来ていて、快くひき受けてくれると書いてあった。
それから Maja は曲を聞いたイメージで何枚もの絵を送ってきてくれて、その中の一枚から選びました。
ジャケットの話が出たからその他のレコードのジャケットについても話すけれど、
「Skip」はね、いつもジャケットのレイアウトをやってくれている石川さんという人のデザイン。
「Skip」に関しては、脳に直撃するような、見ていて脳にきちゃう、
そういうものにしたいということで、
現代音楽の記譜法のいろいろなサンプルを僕が石川さんに持っていって、
それをデザインしてもらって、ああいう色のにじみとかにしたの。
「Bob」に関しては、
「ドイツェ・グラモフォン」(クラシックのレーベル)のジャケットみたいな雰囲気にしたいから、
昔の絵を使いたいので、絵を何枚かセレクトして、
クランヴィルの「生命ある花々〜雛菊」にしたんだけどね。

−:「Bob」と「Skip」と「Irene」とは、つながっているという話を前に聞いたことがあったのですが...。

文:そう、シリーズになっていて題名だけはずっと先まで決まっているんだ。
今回の「Irene」は女の子の名前だからね、かわいらしい感じのアルバムにしようと。

−:今回のアルバムに入っている「奴隷の恩返し」という曲についてですが....。

文:「奴隷の恩返し」はね、最初に河口湖のスタジオで録った段階では、
こういう曲も入っていていいんじゃないかなと思っていたけど、
でも全体が仕上がった時に1曲だけこの曲が浮いていたの。
それでキリングタイムサイドとしては、あれをちょっと外したいなと思ったの。
ところがレコード会社としてはね、あの曲を入れて欲しいと言うの。
それじゃあ、おまけとして入れようということになったんだけど、おまけと書くのも何だから、
今まで未収録というふうに書いていた「奴隷の恩返し」というタイトルがあったから
(最初は「奴隷の恩返し」というタイトルではなく、「Vacantono」というタイトルでした。)
それにして、最後に入れておけば、わりとおまけ的な役割もするだろうしということで。
あの曲は要するに、レコード会社に対しての恩返しということも含めて、ということなんだけど。

−:えーっと、話は変わりますが、市川準さん監督の映画「会社物語」の音楽を担当していますけど、
市川準さんとのそもそもの出会いというようなものは?

文:最初から知り合いだったわけではなくて、
市川さんがチャクラの「さてこそ」を聞いてくれていて、それでCMの仕事をやらないかと言ってきたの。
それからは一時期、市川準といえば、板倉文の音楽だというみたいな感じでいっしょに何本かやった。
最近ではこの前、東京都の広報のCMをやったの。とても堅い物なんだけどね(笑)。

−:「会社物語」のサントラをつくる時、曲をつくるパターンというのはどういった感じなんでしょうか?

文:市川さんは「会社物語」の時だけではないんだけど、
どこに曲をあてるかということを任すんだよね。
僕にまず映像を見せて、僕の思ったところにまず曲をつけさせて、
それを市川さんが並べ替えたりするんだけど。
要するに編集作業までやってしまう人で、フィルムなんかも全部編集しちゃうし、
普通の映画監督はそこまでやらないんだよね。
でも市川さんはそこまでやってしまう人だから、
フィルムの量も普通の人の倍も使うの。

−:市川さんの映画以外にも、前にアニメのサントラもやりましたよね。

文:あれはちゃんと音楽監督がいるわけで、
どこにどういう音楽をつけてくれって言われるの。

−:普通はそのようなパターンが多いんですよね?!

文:いや、ちがう。アニメに関してはそうなの。
あと外国でもそう。ちゃんとしているから。
でも日本の場合は、音楽監督ではなくて、音響監督といって、
セリフ、SEとかのいわゆる音響さんがそこまでやるの。
邦画にいたっては、もっと低レベルで予算がないから。
市川さんはそういったシステムを取らないから、音響さんは手をつけられないわけ。
最後のところでどう並べるかわからないからね。
「BU・SU」の時は、音響さんとの間でいろいろあって、
けっこう市川さんが一匹狼的な感じになっていたりしたけど。
今回はそんなでもなかったみたいだけどね。
市川さんのやり方では、音響さんは最初の段階からは手を出さないで、
SEはSE、音楽は音楽、という感じなんだよね。 

−:それでは、次にプロデュースやプレーヤーとしての最近の活動などについてお聞きしたいのですが。

文:最近は、原マスミさんや矢野誠さんとかのアルバムに参加したり、
あとD-DAYのプロデュースの話があったんだけど、ちょっと止まっている状態なの。

−:中止になってしまったんですか?

文:中止になってしまったというより、バンドって生き物みたいなものだから...
動きが止まった状態で延びてる。

−:そうなんですか。
それから、8月にも2日間にわたってキリングタイムのコンサートがありましたが、
(編注;1988年8月30,31日 青山円形劇場 ゲスト:サンディー、小川美潮
バンド史上初のチケット売り切れ)

次にそのことについてお聞きしますが、
わりと青山円形劇場でやることって多いですよね。
コンサートの企画とか構成などは、板倉さんも考えているんですか。

文:企画というか、スライドなどの映像的な面で凝ろうということは思っているよ。
僕たちはお見せできるようなものでもないから(笑)。
お客さんには、僕たちが考えて曲にあったスライドを見てもらって、
僕たちはその脇で演奏している..みたいなコンサートをね。

−:この前の円形劇場の時でも、何枚かスライドを使っていたようですが。

文:あれは、自分達でやろうとすると大変なので、照明の人にやってもらったの。
それで円形劇場では、キリングタイムはもう何回もやっているけど、
今までお客さんの回りで演奏したり、ごはんを炊いたりしたけど、
今度は奈落の底でやってみたいな。
舞台のせりを一番下までさげて、その中で演奏するの。
お客さんは上から覗きこむような...(笑)。

−:8月の青山でのコンサートのあとに、9月には大阪に行かれたわけですが、
大阪でのコンサートはどうでした?

文:何か、今回は寂しかったんだよね。
MA*TOが大阪に来られなかったの。
(編注:1988年9月28日 大阪バナナホール ゲスト:サンディー、小川美潮
この時MA*TOさんはご長男の誕生が重なって欠席したそうです。)

当初、僕らはMA*TOなしでもなんとかできると思っていたのね。
でもいざ、MA*TOなしでやってみると、MA*TOってものすごく重要だったわけ。
何ていうか、キリングタイムの中ではジュータンを敷いてくれているというみたいな感じだったんだよね。
ジュータンがあったからこそ、土足で入っても、ほこりがたたないでいたわけなんだけど、
そのジュータンがなくなると、土足で踏み入れるとたくさんほこりがたっちゃってね。
近いうちにまた、今度はMA*TOも入れて行きたいと思っている。

−:では、最後に最近やっている仕事のことについてですが...。

文:オリンピックをやっていた頃には、わりとCMの仕事をしていてね、
でも天皇の病気で自粛みたいな感じになっていたんだけど...。
あと、木佐貫邦子さん(ダンサー)の次回の公演の音楽を担当することになってる。
それでこのあいだ、木佐貫さんの仕事の時に笙を録ったの。
宮田まゆみさんという人なんだけど、あれはものすごかったね。
常に笙を暖めておかないとだめなの。
ひまさえあれば電熱器で暖めておくの。
笙をはじめて生で録ったんだけど、ものすごく低い音がでるの。
笙の音域は五線譜のAからFシャープのオクターブ上まででる位なんだけれど、
音(上にむかっていく倍音)が干渉しあってうんと低い音が聞こえてきた。
最初は空調の音かと思ったんだけど、それは倍音が干渉し合って聞こえてきた音だった。
とにかくすごかったよ。

 

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