Reportage MAGMA Japan Tour 2005
前回2001年の来日では”Theusz Hamtaahk”3部作を披露してくれたMAGMAだが、
あれからすでに4年以上の歳月が経っている。
その間MAGMAは数々の新機軸を打ち出しており、
今回3度目の来日に際しては前回とはまったく違った方向が事前に公表されて、
いくつも見所が予想された。
例えば
1. 今年1月に復活し、まだフランス本国以外ではスイスでしか演奏していない”Emehnteht-Re”。
2. 昨年11月にCDが発売となり、現在ノリにノッテいる”KA”の本邦初公開。
3.(完全に確認できてはいないが多分)フランス本国以外では日本が初公開となる復活版”Soi Soi~KMX”。
4. 1日目と2日目がまったく異なる構成となる公演形態。
などなど。
コンサートから少し日にちが経ってしまったが、自分に対する覚書の意味も含め、
東京公演2日間に限ってここに総括してみたい。
東京 渋谷 O-EAST 2005年9月16日
16時30分ごろ渋谷のホテルにチェックイン。
MAGMAはちょうどリハーサル中の頃だろう。
寝不足気味であったため30分ほど仮眠してから、18時少し前に現地へ到着。
ほぼ定刻通り開場。
例のe+手配チケットで整理番号は300番台も思いっきり400に近い方なので諦観状態。まったく慌てることなく入場。
結構広い会場なので、まだステージ前には5〜6列ほどの人垣ができているだけ。
ステージが高いのでその後ろに並んでも十分鑑賞に堪えられると判断。
ステージから約5メートルやや右よりの手摺の近くに陣取った。
OFFERINGをエスノっぽくリミックスしたような変なBGMを聴きながら開演を待つ。
(ひょっとしてMAGMAサイドのしわざか?)
ほぼ定刻どおり、ステージ袖のメイン調整卓にFrancis LINONの姿が見えた。
(ご存知の方も多いと思うが、彼はMAGMAに関わる前はGONGでSwitch Doctorしていた人です。)
BGMが消えて会場の照明が落ちMAGMA登場。
今回の来日メンバーは9人
Christian VANDER:ドラムス、声
Stella VANDER:声、打楽器、etc
Isabelle FEUILLEBOIS:声、打楽器、etc.
Antoine PAGANOTTI:声
Himiko PAGANOTTI:声
James McGAW:ギター
Philippe BUSSONNET:ベース
Emmanuel BORGHI:鍵盤楽器
Frederic D’OELSNITZ:鍵盤楽器
16日のセットリスト
01. Emehnteht-Re(抜粋) 約30分
(Stellaの短い挨拶)
02. KA 約50分
(メンバー紹介の後一旦退場)
03. Kobaia(アンコール)約10分
女性陣3人の衣装にはEmehnteht-Reを意識してか、古代エジプトの象形文字のようなデザインが。
演奏は非常に安定していた。
若手(といっても皆30歳以上?)の演奏が堂に入ってきた。
MAGMA史上最もバンドとして一体化している時期かもしれない。
気になったのはChristianの右肘に巻かれたサポーター。
後でフランスの情報通に確認したところ、
Christianは2年ほど前から軽い腱炎の症状が見られるため、
悪化予防のために着用しているとのこと。
そういう目で見るせいか、前回・前々回に見られた
右のシンバルを横殴りに叩きつけるような奏法が見られなかったような気がするし
(単に自分が見落としただけかもしれないが・・・)
そういえば、今回は後ろのシンバルがなかったし、
首振りも押さえ気味に見えた。
そうは言っても、やはり並大抵のドラマーなど足元にも及ばない演奏を聞かせてくれたことは
実際にライブを見た人なら誰も異論を唱えないであろう。
前回・前々回のように一人で暴走気味に突っ走ったり、
やたらにリズムを崩して他のメンバーを困らせるようなシーンは皆無だったと思う。
そういう意味では過去3回の来日でも最も楽曲の完成度が高いコンサートだったのではないか。
KAはそのままライブ盤として出してもちっともおかしくない質だったと思うし、
むしろスタジオ盤の何倍も迫力と勢いがあったのではないか。
約80分休憩なしの演奏にこちらの集中力が続かなくなり、
アンコールのKobaiaは細部の記憶がさっぱり残っていない。
最後にベースのアンプから煙が立ち昇ったような気がしたが・・・?
Kobaiaの後でStellaから「明日の晩は最後にちょっとした”surprise”があります。」のアナウンス。
一同拍手喝采。
トータル100分、ちょっと短いか・・・?
欲を言えばこの編成でもSoi Soi〜KMXを聴きたかったが翌日のお楽しみに。
ちなみに、ちょっと音がでかすぎる気が・・・
耳がおかしくなりそうでした。
東京 渋谷 Club Quattro 2005年9月17日
定刻通り会場。
入場の際の会場側の手際の悪さはあったが、無事中に入る。
昨日に比べるとうんと狭いし手摺もない。ステージも低い。
中途半端に前に出ず、後方のカウンター席のある一段高い場所に陣取ることにした。
普通のクラブ系BGMを聴きつつ開演を待つ。
ほぼ定刻、人ごみを掻き分けながらメイン調整卓(カウンター席のすぐ前にある)
に向かって来るFrancis LINONを発見。
ステージスタッフとして同行して来たOlivier(メガネの背の高いフランス人)が
マイクスタンドの点検に出てきたのをメンバー登場と勘違いした人が大きな拍手で迎え、
その後笑い声が続いた。
すぐに本物登場。
5本並び立つマイクスタンドに
左からIsabelle FEUILLEBOIS、Antoine PAGANOTTI、Himiko PAGANOTTI、Stella VANDER、Christian VANDER
そしてステージ左端のグランドピアノにEmmanuel BORGHIという布陣。
<Kosmik Wokehl>セットリスト
01. Trilogie Theusz Hamtaak (extrait)
Theusz Hamtaahk〜Wurdah Itah〜MDK
02. Hhai
90年代に活動していたLES VOIX DE MAGMA編成でも3部作の抜粋をメドレーで演っていたが、
当時はドラム、ウッドベースやキーボード類も加えたもっと大きな編成で、
ChrisitianはTheusz HamtaahkとMDKではドラムを叩くか、あるいはまったく登場しないかであった。
今回のように作曲者自身がこの2曲をステージ上で歌うという試みは
恐らくMAGMA史上でも初のことだと思われる。
特にMDKは1973年のスタジオ録音盤に基づくヴァージョンで歌われ、
中盤のChristianの独唱は今回を見逃した人は二度と生では見られないのではないかというぐらい貴重。
今年1〜2月にフランスで行なわれた一連のKosmik Wokehコンサートでは
ここまで気合を入れて歌っていなかったと思われる。
低音からファルセットまで声もよく通っていた。
1時間弱ピアノを叩き続けたEmmanuelのタフさと正確さも特筆ものである。
続けてショートヴァージョンのHhai。
まるで賛美歌か何かのような荘厳な響きすら感じさせる。
バンド編成の演奏だとこの感じは出ないのではないか。
しばしの休憩を挟んでPerkutehr Slakenzainの登場。
ステージ左からFrederic D’OELSNITZ、James McGAW、Christian VANDER、Philippe Bussonnt、Emmanuel BORGHI。
<Perkutehr Slakenzain>セットリスト
01.Kohntarkosz
02.Soi Soi〜KMX
「Hamtai!」の掛け声無しにKohntarkoszが始まる。裏拍と表拍がコロコロ変わるシンコペーション多様の複雑なリズム構造を追いかけているうちにあっという間に後半に突入。アレンジは1998年初来日の時と同じだが、後半の盛り上がり方が凄い。
何気にこの日Kohntarkoszが演奏されたことで、
KA→Kohntarkosz→Emehnteht-Reという関連3作が揃い踏みしたことになる。
Kohntarkoszの余韻を味わう間もなくSoi Soi〜KMXが始まる。
できればMAGMA編成で聴きたかったが、多くは要求すまい。
むしろ贅沢極まりないカラオケをバックにしっかり歌いまくってしまった。(歌詞は適当)
後半Philippeのベースソロは期待を上回る凄さ。
現時点ではTOPもPAGANOTTIもこれだけ弾けないのではないか?と思わせる内容。
大阪ではほとんど聴けなかったと言う最後のギターソロも東京ではJamesがしっかり演奏してくれた。
彼のソロも演奏を重ねるごとに明確な質の変化が感じられる、もちろんどんどん良くなる方向でだ。
大阪ではこの後”Mekanik Zain”が続いたわけだが、
これだけのKMXを聴かせてくれるなら1曲少ないぐらい何の問題もない、
と思わせるぐらいの素晴らしさであった。
割れるような拍手の中Perkutehr Slakenzainの面子が一旦退場した後メンバー全員が登場。
アンコールは9人によるタイトル未定のバラード。
2001年の来日時にもアンコール演奏していたあの曲である。
2001年の時はまるでソプラノサックスを吹くかのようにマイクを使ったパフォーマンスを見せてくれたChristianだが、
今回はそうしたアクションもほとんどなくじっくりと歌い上げてくれた。
歌自体も静かに凄みをました感じ。
結局昨晩Stellaが言っていた”surprise”とはこの曲のことだったらしい。
アンコールが終わり全員退場するも、
鳴り止まぬ拍手にメンバー全員ステージに再登場して挨拶して本当にお終い。
正味2時間立ちっぱなしはきつかったが、
その何十倍、何百倍もの価値ある時間を過ごせたことに、
この機会を作ってくれた全ての人達に感謝の念を禁じえない。
終電の時間を気にしつつ、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にした。
最後に事後フランスから届いた情報を少し付け加えておきたい。
”Emehnteht-Re”はまだ未完成であり、
10〜15分程度の未発表パートを追加して、
2006年1月頃から録音を開始する予定だそうだ。
気になる未発表パートについては1977年に短期間ステージで披露された曲であるとも、
今までまったくライブ演奏されていない曲であるとも言われて、情報が錯綜している。
実際に音が聴けるまでのお楽しみにしておいた方が良さそうである。
今年5〜6月にかけてパリ郊外のライブハウスLe
Tritonで行なわれた
4週連続週替りメニューのMAGMA 35年祭の模様を収めたDVDが来年発売になる。
各週にDVD1枚が割り当てられ、計4枚のボリュームになるが、
現時点では来年1年かけて1枚ずつ順に発売していく予定らしい。
現在編集作業を進めているとのこと。
2005年10月4日 宮本重敏