1061年5月21日

ブリスランドへの報告の旅を終え、ドラッヘンブルクへと帰郷する。

私は生きる力を失っていた。何をする気も起きなかった。
友人である花達にも、酷い仕打ちをしていた。水も与えず、彼らに対して、何もする事が出来なかった。
家に帰ったら、きっと彼らは私を出迎えてはくれないだろう。そう思って家の門を潜った。

信じられない光景が広がっていた。
花壇の花達は、より綺麗な姿で私を待っていてくれた。
でも考えた。きっと、ただ待っていてくれた訳じゃない。
誰かに……きっと、あの人達に、花達の命を大事に護って頂いた。
嬉しい気持ちと共に、申し訳なく、そして恥ずかしくなった。
彼らはきっと、私の事を見るに見かねて、元気付けようとしていたに違いない。
こんなにも多くの人に支えられているのに、悲しみに溺れて何もしなかった、独りよがりな私。
救って下さった皆様の為にも、涙とはもう、あの思い出と一緒に、さようなら。
そして支えとなった方達のためにも、私が誰かの支えとなる事が出来たら、それが私の幸せ。
それが、私が出来る、唯一、最高の恩返し。

秋になったらもう一度ブリスランドへ渡り、フィリーネの花の種を持ち帰って、この花壇に植えよう。
そしていつか、この世界をあの“幸せの花”一杯にしてみせよう。
いや、“幸せの花”だけではなく“幸せ”で一杯に。
きっとやって来る。その時の為に、愛と希望と光を忘れずに、
人々に笑顔を与える事のできる喜びを胸に、
私は、生きて行きます。