1060年7月20日
ある村の村長の身代わりとなり、ザハークにて捕らえられる。
小さな女の子の母親である村長がが囚われの身となることが、私には耐えられなかった。精神的な苦痛よりは、身体的な苦痛の方が幾らか楽だと思っての私の判断は、少しお節介ではあったかも知れないけど、快く身代わりを引き受けさせて貰った。私は捕らえられ、鞭打たれた。
公開処刑されそうになり、一時は死を覚悟した私だったけど、最後にはアメーサさんという領主の部下の方があろうことか私の身代わりとなり、散った。結局、私は誰かの犠牲の上に生かされている。それを考えると、切なくてやりきれない。
メイ君の天慧院の先輩であるユーニンさんという女性が魔神に魅入られていたという事実によって、このザハークは呪われていた。メイ君は、ユーニンさんに自らの手で引導を渡した。会うたびに強く逞しくなるメイ君。自分の事の様でうれしい。こんな事件が無ければ、手放しで喜べたけど……。
それから、不思議な雰囲気の男の人(男の子?)ネヴィルさんと出逢った。嫌々ながら領主の言う事を聞かざるを得なかった様子で、その事をすごく悩んでたみたい。少し悪ぶっているところがあるけれど、それは彼が純真であるが故なんだと思う。水晶の様な透明な心が、私には見て取れる。
ロコちゃんと村の人の笑顔をなんとか失わずに済んだのが、私にとっては唯一の救いだった。彼等の笑顔を見る為に、私は旅を続けているのではないかとさえ思う。これこそアーのお導きではないだろうか、と。
生涯、ただ一度しかないかも知れない、沢山の人たちとのかけがえの無い出会い。
私は大切にしたい。後悔しない様に。