残暑見舞い申し上げます。

 イラストの書けない私は、SSにて語ってみようかと………。


 

 霊戦機ヴァトラス特別篇

  夏と言う夜空の下

 

「凄く、綺麗ですね」

 少女が、打ち上げられる花火を見て言った。

 長い栗色の髪を結い上げて、赤い花の模様がある白い着物を着ている。

 今は夏休み。そして、夏祭りの最後を飾る花火が始まっている。

 戦いから一年と四ヶ月の月日が流れた。

 高校三年になったハヤトは、去年のクリスマス・イヴの朝、その少女と出会った。

 いや、正確には訪れたと言うべきだろう。

 名はアリサ。朝目を覚ました途端、「おはようございます」と目の前にいたのだ。

 祖父同士の決めた許嫁。

 最初は、本当に成立したのだのか?そもそも、祖父同士で決めていいのか?などと思った。

 けれど、今は、こうして彼女の事が好きになれたような気がしている。

「ハヤトさん、凄く眺めが良いですね」

「ああ」

 アリサの横顔が、いつもより綺麗に見える。

(綺麗、だな………)

 そう思いつつ彼女を見る。

 彼女は、自分の側を離れず、いつも微笑んでいた。

 その微笑が、彼女の優しい心が、好きにしていったのかもしれない。

 あいつ以外を、サエコ以外の人を初めて「守りたい」と思えるようになれた。

(アリサのこんな綺麗な顔見るのは、初めてだよな)

 ハヤトは、花火を見る事はしていなかった。

 気づけば、彼女に気を取られていた。

 彼女といると、凄く楽しい気分になれる。

「ハヤトさん、どうかしたんですか?」

 アリサが、こっちを見た。

 ハヤトは、少し照れながら、首を振る。

「い、いや、その………」

 なぜか、言葉が詰まる。

「ハヤトさん」

 アリサが、真剣な表情になってこちらを見る。

「ハヤトさんは、私といて楽しいですか?」

 当然の質問。

 ハヤトは、一瞬だけ間をおいたが、

「ああ。アリサといると、凄く楽しいよ」

「本当、ですか?」

「本当さ」

 その瞬間、彼女が抱きついてきた。

 なぜか、泣いている。

「アリサ?」

「……私、帰りたくないです………」

「どう言う事だ?」

「……お爺様から連絡があって、『ネセリパーラに帰って来い』と………」

 ネセリパーラ。つまり、彼女の育った世界だ。

「なぜだ?だって、ここに来て七ヶ月近く経っているのに、何も言われなかったじゃないか」

「……分かりません。ただ、私が貴方といると、貴方が不幸になるって………」

「ふざけるな!」

 ハヤトは怒鳴った。

「誰が、不幸になるって言うんだ?俺は、アリサといて不幸だと思った事は無い。それに、今の俺には、アリサがいないとダメな気がする」

 今まで、愛する人を殺された悲しみを引きずったまま、いつもの生活を送っていた。

 その時の自分は、完全に最低な人間だった。

 だけど、彼女が側にいてからは違った。

 今は、彼女がいないと、再び最低な人間になってしまうと思う。

「じじい達が何を言おうと、俺は、絶対にアリサをネセリパーラへ帰さない。ずっと、側にいて欲しい」

「ハヤトさん………」

 二人は、共に抱き締める。

 そして、唇を重ねた。これが、二人にとってのファーストキス。

 涙が自然に流れる。

 時間が止まればいいと思った。本気でそう思った。

 けれど、時間と言うものは止まってくれない。

「アリサ、好きだ。好きだから、こう言える“愛している”と………」

「……私も、貴方を愛しています………」

「ふぉっふぉっふぉっ。作戦成功じゃの」

 突然、第三者が現われた。

 その声の主は、紛れも無く勝手に許嫁などと言う成立をした祖父、神崎獣蔵である。

「じじい!?」

 慌てて、抱いていた手を離す。

「ふぉっふぉっふぉっ。ようやく、本音を言ったの」

「本音って、まさか………!」

 どうやら、何かを気づいたようだ。

 ハヤトはその辺に落ちている木の棒を拾うと、恐ろしいほどのオーラを放つ。

「アリサが、帰ってしまうって言う話は、“ウソ”だな」

 ハヤトの声からして、完全に怒っている。

「よく分かったの────ぬおっ!?」

 炎のかまいたちが、獣蔵を襲う。

「こ、この大バカ者!一般人に剣術を繰り出しては────」

「誰が、一般人だ!このくそじじい!」

 炎のかまいたちが、再び獣蔵を襲う。

 無精ひげを生やした祖父の頭を軽く薙ぎ払う。

「ふぉっふぉっふぉっ。このわしに攻撃を当てようなぞ、十年────」

「青龍弐刀剣ッ!」

 龍の姿をした青い光の波動が放たれる。

 獣蔵に見事命中した波動は、消えた。

 当然、獣蔵は空を飛んでいく。

「全く、あのじじいは何を考えているんだ?」

 木の棒を捨て、ハヤトが飛んでいく獣蔵の姿を見ながら言う。

「でも、さっきの言葉、嬉しかったです」

 アリサが腕を組む。

 彼女の胸の感触が、腕を伝わってくる。

「ま、これで、またアリサが俺の側にいれくれる。一件落着かな?」

「そうですね」

 そして、二人は二度目のキスを交わした。

 今度は、邪魔者はいない。花火だけが、二人を照らす。

 夏と言う夜空の下、お互いの気持ちを改めて知った二人に祝福あれ………。


 

あとがき『何と言うクサイお話()

 絶対、残暑見舞いのSSじゃないですよね、これ()

 迷わず、消去しちゃって下さい。こんなSS書いたのがいけないのですから。

 二人の『愛』が課題になってるし………(残暑見舞いを課題にできないかったと言う………)

 最後に、こんなSS読ませて、申し訳ありません!!m(_ _)


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