いつかどこかの空の下で
〜皐月第三週〜
最終回
「あたしは・・・争いを無くしたいかな」
「と、いいますと?」
「んっと、よくはわかんないんだけど・・・とにかく争いなんて無い方がいいじゃない」
ライが少し笑った気がした。
そしてその後、少し雑談をかわしてからあたしは部屋へと戻った。
次の日。
「マスター。待ってました。お連れの方も中へどうぞ」
昨日の扉の前にいたロボットの前にあたし達は立っていた。
今日はその向こうの扉は開けられている。
「中に入ってくれだってさ」
一応、言葉のわからないだろうライに向かって説明してやる。
あたし達はロボットに付いて奥へと進んでいった。
中には端末などがたくさん・・・といったものを想像していたのだが(ほら、なんせメインコンピュータルームだし)、実際は特に何も無いがらんどうの部屋だった。
だけど、よく見ると部屋の周りの壁一面にスクリーンやパネルがあるのが見えた。
案内をしてくれたロボットが壁に近寄り、いくつかのパネルに触れる。すると電源が入ったらしく、壁のコンピュータに電気がどんどんとつきはじめた。
「しばらくお待ち下さいね、マスター」
そう言ってロボットはさらにいくつかのパネルを、どんどん操作していく。
ふと見ればライがぶつぶつと何か言っているようだった。聞きなれない言葉・・・ということは、きっと何か魔法でも使っているのだろうか。
あたしは、機械を操作するために忙しく動いているロボットをじっと見ていた。
機械の音が響いていた。
徐々に様々なメーターなども動き出して来る。
ふとロボットがあたしの方へ近づいてきた。
「マスター。準備できました。いつでも人間を死滅させられるだけの量のウィルスが散布できます」
・・・・・・え゛っ!?
「ちょ、ちょっと待った、ちょっと待ったぁっ!!」
「? どうしました、マスター。マスターは人間を滅ぼして争いを無くすのが目的ではなかったのですか?」
・・・・・・はいぃ!?
「いやね、そりゃ争いは無くなって欲しいけど、そんな無茶苦茶な方法ってわけじゃ・・・」
「ユーキ! 大変だ!! シンシュウが人間に攻められてるぞ!!!」
・・・・・・え゛ぇ゛ぇ゛ぇっ!?
「ちょ、ちょっとライまで。・・・本気?」
「あたりまえだ!」
ライが珍しく焦っている。
ここまで焦ったライを見るのは始めてじゃないだろうか・・・と、そんなこと言ってる暇は無かった。
「さっき上の様子が気になったんで、魔法で確認してみた。そしたら、人間がシンシュウに攻めてきてる! とてもじゃないけど、しのぎきれる数じゃなかったぞ、あれは!!」
どうやらライの様子から察するに本当の事らしい。
じゃああたしはどうすれば・・・
「マスター、散布してよいですか?」
「ユーキ! どうする!? まだ準備は終わってないのか!? まだ何もこっちに有利な物は無いのか!?」
あるけど・・・それつかったら、あんたも人間なんだから、死んじゃうんだよ、ライ。
思わず苦笑がもれる。
「ユーキ・・・一旦、上に戻るか!?」
「早く許可を下さい、マスター」
「ユーキ!?」
「マスター!?」
「ユーキ!!!!」
「マスター!!!!」
あぁ・・・もぅ・・・何がなんだか・・・・・・・・・・・・
頭がぐるぐる回る・・・・・・
あたしは・・・あたしは・・・・・・
「・・・と、いう夢を見たのよ」
お昼休み。
ケイちゃんと買ってきたパンを食べながらの会話。
「1万年後ねぇ・・・あんた、SF小説の読みすぎ」
ケイちゃんがお箸をこちらにびしっと指して言い切る。ケイちゃんはお弁当だ。
「そりゃあねぇ、ここんとこSF漬けだったけどさぁ・・・」
と、あたしの目の中に2人組みの男どもが入ってきた。
片方は(一応)あたしの彼氏の柳沢。で、その隣を歩いているのが(やっぱり一応)柳沢の親友と自称している片品が歩いていた。
・・・・・・ん?
柳沢?
で、片品は確か名前は・・・片品 未来だったっけ・・・?
ヤナギに・・・ライ!?
・・・・・・・・・・・・とりあえず。
「ヤナ!」
声を柳沢に向かってかけると同時に、手を適当にあげて合図してやる。
それに気づいて2人が近づいてきた。
「・・・で、なんだって? 俺らが夢に出てきたって?」
これは柳沢のセリフ。
「さらに言えば、俺もその中に出てきていて、最後の最後には、御神楽さんをさんざん煽ったって?」
こっちは片品のセリフ。
あたしは頷く。
確かに、言われてみれば、夢の中のヤナギと今いる柳沢は同一人物に見えなくも無い。ライと片品だって同じく、だ。
「「・・・・・・優希も見たってか」」
「え?」
男二人の声が奇麗にハモった。
「・・・・・・空が青いわね、ヤナ」
「だな、優希」
ま、こういった不思議な事もあるわな。
・・・とりあえず、これについて詳しい事はお昼でも食べてから考えることにしよっか。