いつかどこかの空の下で

〜皐月 第二週〜




 「じゃあ、ライ来てくれる?」
 「構いませんよ」
 あたしはライに手にしていたベルトを1つ渡した。

 2人がベルトをしたのを確認したあと、両開きの扉がゆっくりと開けられた。


 中は・・・そう、何かの研究室のような作りになっていた。
 明かりはついてなく、所々にある非常灯の明かりと赤い小さな予備電球がついているだけだった。
 はっきり言って・・・非常に・・・・・・不気味だし、これ以上無いってくらい、恐い。
 「・・・先を、進みましょうか。ユーキ」
 ライがとまどうあたしに声をかけてくる。あたしは覚悟を決めるとはっきりと頷いた。

 カツン・・・カツン・・・・・・
 足音が静かに響き渡る。
 この中のどこへ向かえばよいのかいまいちわからなかった。しかし、入って少し歩いた所にあった、とあるプレートを見つけてからは、目的地が決まっている分気が楽になったと言えよう。
 そのプレートには「長野県第三団体軍事施設(B5)」と書かれていた。そして、この施設の地下5階(つまり、今、あたしたちがいる所ね)の地図も書かれていたのだ。
 あたし達はまずメインコンピュータルームと書かれた部屋へと向かってみる事にした。
 もちろん、ライといえども文字は読めないので書いてあった文字はあたしが読んだ。どうやら無機物に魔法は効かないらしい。
 地図によれば、メインコンピュータルームは廊下をずっと道なりに行った突き当たりのはずだ。
 
 あたし達はお互いに無言で歩いていた。
 とりあえずこないだのお礼を言っておいた方がいいだろう・・・が、いまいち言葉がまとまらない。
 (えっと・・・)
 「あ、あのさ、ライ」
 「・・・はい?」
 ライが歩きながらあたしの方を見る。
 「こ、ここってなんか不気味だよね」
 「ですよね」
 (だぁっ! そうじゃないでしょ!)
 思わず自分で自分に突っ込みを入れてしまう。
 そしてまた沈黙が続く。
 さっきかこんなのばっかだ。
 (よし、今度こそ・・・)
 と、ライの方を見る。するとライは歩みを止めて、じっと前方の闇を見ていた。
 「・・・なに?」
 すると、ライは指で「静かに」と合図してから、あたしの方へとゆっくりと近づいてきた。そして耳元で囁く。
 「(静かに・・・してください。誰か、います)」
 「(えっ・・・?)」
 じっと目をこらす。そう言われれば、人型の何かが立っているような気がする。
 「(ここからは少し慎重に行きましょうか)」
 どうやら、あたしはお礼を言う機会を完全に逃してしまったようだった。



 「こんばんわ。少し・・・いい?」
 夜。
 時間にして午後9時くらい。
 あたしはライの部屋を訪れていた。
 「おや? どうしました? こんな夜中に」
 「ん・・・ちょっとね」
 まだ夜中というには早すぎるだろう・・・が、そんなことはどうでもいい。
 部屋に入ると同時にライが椅子を勧めてくれた。あたしはそれに浅く腰掛けると昼間の事についての相談を始めようとしていた。


 あの時、人影を確認してからあたし達はゆっくりとそれに近づいていった。
 そして、その人影とあたし達のお互いが確認できるくらいまで近づいた時・・・
 「ミカグラユーキ・・・マスターですね?」
 その人影が話し掛けてきたのだ。

 ・・・日本語で!

 「マスター、久しぶりです。マスターが現れたということは中の物を取りに来たのですね?」
 あたしの混乱をよそに、どんどん話し掛けてくる人影・・・よく見れば、人間、いや、ロボットみたいだった。
 「あ・・・あの? いまいち話が見えないのですけど?」
 「・・・? ミカグラユーキマスターですよね?」
 あたしが黙って頷く。
 ちなみに隣ではライがやりとりを一言も口を挟まずに見ている。
 「ライ、どう思う?」
 「どう思うも何も・・・言葉が判りませんから」
 あ、そうか。
 無機物には魔法は効かないって、さっきプレートの文字の時に教えてもらったっけ。
 「・・・で、マスター。中の物を準備してよろしいですね? 少し準備に時間がかかります。また20時間後くらいに来てください」
 そう言ってそのロボットは中へとメインコンピュータルームの扉の中へと入っていってしまった。
 そう、その人影・・・ロボットは、目標としていたメインコンピュータルームの扉の前に立っていたのだ。
 中から扉の鍵を閉める音が聞こえる。

 しょうがないのであたし達は一旦引き揚げる事にしたのだ。


 「・・・と、いうわけ」
 一通りの説明をライにする。
 ちなみに、それまで太守達も含む皆には「とりあえず見つからなかった。また明日行ってみます」とだけ言ってある。無論、ライも日本語が分からない以上は何があったのかもまったく分からない状態だったに違いない。
 「つまり、あの機械の人間はユーキの事を知っていて、あの扉の向こうには何かが眠っている・・・というわけだ?」
 「多分ね」
 はっきり言えば、何があるのかもとんと検討が付かないばかりか、あのロボットについてもまったくもって訳が分からない。
 「とりあえず、あの扉の向こうにはユーキが望む物があるかもしれない・・・と」

 少しの間、部屋を沈黙がつつんだ。

 「時にユーキ」
 「ん?」
 「理由を考えず、あなたは今、何を望むでしょう?」
 またずいぶんと、唐突に聞いて来る。
 「そりゃあ・・・」


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