いつかどこかの空の下で

〜皐月 第一週〜


 「(いいわ。信じたげる)」
 耳元で囁いた。
 「(すまない。だが、獣の血は一度受けた恩は必ずそれに対する礼を持って返す。覚えておいてくれ)」
 あたしが頷くよりも早く、ヤナギが腰に手をまわしてきた。そして周囲を鋭く見渡す。
 見れば、四方八方、住民やら衛兵やらに囲まれている状態となっていた。・・・が、トラのライカンスロープであるヤナギには関係の無いような事だったらしい。
 ヤナギはあたしを右手でかるがると掴んでから・・・飛んだ。

 ・・・無論、ジャンプした、の意の「飛んだ」である。そして次の瞬間にはどこかの家の屋根の上にいた。
 「ふぇ〜・・・」
 ため息に似た声が出てしまう。下では住民やら衛兵やらが何か叫んでいるようだった。
 「よし、逃げるぜ、ユーキ!」
 あたしは頭を頷きかけて、そして思いとどまる。
 「・・・・・・ライはどうするの!?」
 「あん・・・?」
 確かにこのままなら逃げられる。しかし、ライは・・・?
 『大丈夫です。シンシュウでまた落ち合いましょう』
 「え・・・?」
 頭の中にライの声が響いた。これも魔法なのだろうか。
 「大丈夫みてぇだな。よし、飛ばすぜ。落ちないようにしがみついてな!」
 あたしが何か言うよりも早く、ヤナギは屋根の上をかなりのスピードで走りはじめていた。


 数日後。シンシュウ太守の館。
 あたしは少し前と同じように応接間で太守を前にしていた。
 「で、具体的に何をすればいいのでしょう?」
 まず、これをはっきりとしておかないと。あたしは太守及びその場にいる他の人達(もちろん、ヤナギ達も近くにいるわけだ)に聞きかける。
 「それについてじゃが・・・まずは、少しついてきてくれないかの」
 太守はそう言って立ち上がった。あたしもヤナギ達もそれに従い立ち上がり、太守が出ていった後を追いかけた。
 
 「・・・これは?」
 館の地下深く。階段をかなり下った所にそれはあった。
 そう、白い金属のような物でできた扉が。扉の周りにはあからさまに機械のような物まである。
 「ここにはじゃな、古代の遺産・・・機械が大量に置いてある場所じゃ。実際に中に行って確かめた者もいる」
 周りにいるヤナギ達も頷いている。どうやらメジャーな話らしい。
 「われらはこの古代の遺産を十数年前に人間から奪い、その上に街を作る事でわれらの占領するものとした。それも、今、現在おこっているような事が起きた時を考えての事だったのじゃ」
 今現在起こっている事というのは、人間とライカンスロープとの戦いを指しているのだろう。つまり、万が一の時のために人間に対抗する最終手段を手に入れておいたというわけだ。
 そこまで話すと侍従らしき少年が二本のベルトのようなものを太守に手渡した。
 「しかし・・・だ。まずこの扉の向こうには古代魔力がまだたくさん残っており、素のままで行けば古代魔力にあてられて、いずれ死んでしまうだろう。そこで、このベルト」
 そう言ってベルトをあたしの方に向けた。
 「このベルトをしていればその魔力を遮断できることが判っている」
 ・・・要約すると、扉の向こうにはまだ放射能がたくさん残っていて、で、その放射能を遮断するベルトがある・・・と。
 「つまり、そのベルトをして、扉の向こうから使える物を持って来ればいいわけね? で、それが壊れていたりしたら、修復もすると」
 太守が頷く。
 「質問いいですか?」
 「何じゃ?」
 ふと疑問が一つあたしの頭に浮かんだ。
 「持って来るだけなら、勝手にどんどん何でも持ってきちゃえばいいじゃないですか」
 そう。
 役に立つ、立たないは別として、全部持ってきてしまえばいいのではないか。
 使わなければそのまま処分すればいいだけなんだし・・・
 「・・・確かにな。だがそうもいかんのだ。理由の1つとして、わしらにはどこまでが1つの機械なのかもわからんし、また、どのような物を指して機械と言うのかもわからん」
 「あ・・・」
 言われれば、そう・・・かもしれない。
 まったく機械と言うものを知らない人にとっては、何が機械なのか、フィーリング以上の事はわからないのであろう。機械か、機械で無いかの区別くらいはつくけど、どういった形をしているかとか、そういった物は知識が無いためまったく判らない・・・わけか。
 「そして、2つ目じゃが・・・これは入ればわかる」
 
 多少の沈黙が流れた。

 「・・・とにかく、あたしは行って、役に立ちそうなものを持ってくればいいわけですね」
 太守が頷く。
 「で、ユーキに誰かが一緒にくっついてやった方がよくないか?」
 ヤナギが発言する。それにライ(そう、彼はあたしたちが帰ってきた時には、すでにシンシュウの街中でくつろいでいたのだ!)まで隣で頷いていた。
 「確かにな。誰を連れて行くかは・・・機工士殿に任せようではないか」
 そう言って、太守は2本のベルトをあたしによこした。

 あたしは・・・


 1.「(とりあえず、礼を返して貰うという意味も込めて)ヤナギ、お願いできる?」(有効投票 1票)

 2.「(まだトキオに行った時のお礼もしてないし)ライ、頼める?」(有効投票 5票)