いつかどこかの空の下で
〜卯月 第二週目〜


 夏。
 一般の高校では夏休みが終わったとされる、9月1日。
 あたしは・・・見渡す限りの荒野にいた。
 「えっと・・・・・・?」
 自分でもよくわかってない。考えても、「なんで?」としか出てこない。
 「う〜ん・・・・・・・・・?」
 少し離れた所で、何かの声が聞こえた。なんだろう。聞いたことも無いような声だった。
 「学校・・・は?」
 ふと思った事が声に出てしまう。だけど、答えてくれる人は周りにはいなかった。


 「うぃっす♪」
 「あ、優希、おはよ。久しぶり」
 あたし、御神楽優希。日本の某県の工業高校生。学年は2年・・・つまり、年は16歳。
 今日からまた学校の授業が始まる。・・・一般で言う所の『夏休み』が終わったというわけだ。
 ある生徒は学校が始まった事を喜び、またある生徒は逆にもっと休みをくれと、騒ぎ立てる。実際は、学校自体が勉強をする所なんだから、休みが欲しければ学校なんぞ止めてしまえばいいとも思えなくも無い。
 あたしは、どっちかっていうと前者。夏休みだからと言っても何処へ行くわけでもなく、やる事も無く日がな一日ぼーっとしていたりしてたくらいだし。
 学校までは電車と自転車とで行く。
 近くの駅まで電車で行って、そこから自転車で15分程。都会の人が聞けば、信じられないような事だけどこれがこっちでは当たり前。
 そして、あたしもそれに違わず、自転車での登校中。さっき挨拶を交わした、約1月半ぶりの友人も隣で自転車をこいでいる。
 「どう? ケイちゃんは。夏休み、どっか行った?」
 あたしが隣の友人(相沢 恵(あいざわ めぐみ)。略して「ケイちゃん」)に聞いた。
 すると、やや長い髪の毛を風になびかせながら友人はこちらを向いて、
 「私? どこも行ってないよ。彼氏とかだっているわけじゃないしさぁ」
 と、軽く笑いながら答えて来た。そして何か重要な面白い事を思い付いたかのように微笑を浮かべながら少しあたしの方へ近づいて来る。
 「そういう優希はどうなの? 彼氏、いるんでしょ? どっか連れてってもらった?」
 どうやらやぶ蛇だったぽい。どうもこういった話題(こういったってのは、色恋沙汰一般の事ね)はしっくりとこないんだよね。
 「ま、まぁね。でも、結局は何処にも行ってないのと同じだよ。向こうだって休みの日以外は仕事だしね」
 「ふ〜ん」
 納得したのかしてないのか、ケイちゃんはそれについてはそれ以上追求はしてこなかった。

 ・・・しばらく自転車を走らすと、やがて駅前の商店街から住宅街へと周りの風景が変わっていく。
 もう少し・・・そう後5分も自転車を走らせれば学校まで着くだろう。
 「あ〜ぁ。結局今年も、海にも山にもいけなかったなぁ・・・」
 思わずあたしがもらす。
 「せめて、どっかに1回くらいは行きたかったかな」
 それに対してケイちゃんは「そうだね」と軽く答えて自転車のスピードを上げた。そして「ほら、早く行こう! ひさびさに皆に会えるんだし!」と声をかけると前を向いて立って自転車を漕ぎ出した。
 非常にケイちゃんらしいというか、なんというか。あたしは、「うん」と誰にとも無く言って、自転車を立って漕ぎ出す。
 住宅街の中を抜けて、通勤のサラリーマンの車のわきをダッシュで通り抜け、おまんじゅう屋の向こうの曲がり角を曲がれば、そうすれば学校までは一直線!
 目の前でケイちゃんが曲がる。
 あたしもそれに負けないくらいのスピードで曲がり角を曲がり・・・・・・

 ・・・・・・曲がると、そこには見渡す限りの荒野が続いていた。
 自転車は・・・無い。
 目の前を走っていたケイちゃんもいない。
 サラリーマンの車も、少し古くなってきた家が多い住宅街も、そして約1年半通った学校も何処にも見当たらない。



 ・・・そしてあたしは今、ここにいる。
 もう一度だけ周りを見渡してみる。どっちを見ても見渡す限りの荒野。一応念のため、授業とか実習の時しかかけない眼鏡もかけてみたけど、何が見えるわけでもない。強いて上げるなら見たことも無い木がはっきりと見えた事くらいだろう。
 そして一応、自分の格好も確認する。学校規定の黒いブレザーの制服に筆箱と工具だけが入ったリュック。そして、ポケットにあるのはお財布と定期入れで、懐には懐中時計もある。
 身につけていた物は一通りあるみたいだ。
 ・・・だからといって、どうなるものでも無い・・・というのも現実ではあるだろう。

 ふと、また何かの声が聞こえた。・・・いや、声というよりはよく聞くと、何かの『言葉』なのではないかと思うくらいだったが、やはり聞いた事は無い。
 (獣かな・・・? それとも、何かもっと別の・・・?)
 体が少し震える。多分、悪い夢か何かだろうが、痛い思いはしたくない。
 注意深く、声の聞こえた方へ向く。やはり、何かいるようには見えない。一面に荒野が広がっているだけだ。草だって何かが隠れられるほど生えてるわけでも無い。
 しばらくすると、もう一度『言葉』は聞こえた。しかも、今度はかなり近くで。
 (何・・・? ねぇ、何・・・・・・!?)
 何がなんだかわからない。
 だけど・・・『言葉』はあたしに向かって何かを言っているようだった。
 でも、声のする方向には誰もいない・・・



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 2.わけがわからないが、声のしたのとは逆方向へ逃げる(有効投票数2票)