上毛新聞にて5回シリーズ連載中

第一回《アートが凝縮された街》

第三回《花の都幻想と格差》

第四回《アジアが大ブーム》

第五回《時間にあわてない》


第二回《花束の中に色のリズム》

 

 パリでは遠い存在だったおしゃれなことが身近に感じられる。例えば、シャネルとかルイ・ビトンとか一流ブランドの本店があるし、ニューコレクションはすぐ目に入る。日本にいるとそんなブランドが一人歩きしていて私たちはぞろぞろとついて行ってた。
 フラワーデザイナーの私は、刺激を受けるためにこの街にきた。今は色の天才といわれるエルメスや、ウンガロ御用達のフラワーデザイナーのもとで働いている。
 ある日、花店にマダムウンガロから、三宅一生さんへ花束の注文の電話が入った。
 注文では「とても素敵な花束を作ってください」と、いたって簡単な言い方だ。ただこれはデザイナーから同業者のデザイナーに贈るもの。これこそセンスが問われる。
 こちらのフローリストはプロ意識が強いので要望にあった完ぺきなものを作り上げる。そしてファッションデザイナーもフラワーデザイナーもお互い信頼しあい、刺激を受けあっている。パリはそんなとても良い環境でもある。
 一般的にパリで売れる花束は淡いトーンだ。そして、花束の中で色のリズムがある。日本の一般的な花束のように多種類の花々が四方八方に広がったものは好まない。日本とは違い、ただ見栄えが大きければいいという感覚はない。
 先週の金曜日、妻に7万円もする花束を注文した男性がいた。バブルの時の日本でもこんな話を聞いたことがない。これは特別な例としてもパリでは(ドイツもそうだったが)金曜日が一番花束が売れる。お父さんが家族が待っている夕食の食卓へと買っていくのだ。ヨーロッパではそんな素敵な習慣が、そして花が生活に根付いている。
 日本のフローリストの技術が上がればあがるほど、日本でももっと生活に花が密着するのではないかと、この7万円の花束をみて感じた。300本以上の花々を手の中で束ねる技術とセンス、この束ね方で花束のムードが全く変わってしまう。私が真のプロのフラワーデザイナーをみた瞬間でもあった。  私もプロのフラワーデザイナーとして、故郷の群馬から花を生活に根付かせる努力をしていければと思う。




《田子鈴音》
フラワーデザイナー、美研フラワーデザイン学院本部講師
大学卒業後、マスコミ業界に就職。その後、単身ドイツに渡る。
2000年1月からパリ在住。