上毛新聞にて5回シリーズ連載中

第一回《アートが凝縮された街》

第二回《花束の中に色のリズム》

第三回《花の都幻想と格差》

第四回《アジアが大ブーム》


第五回《時間にあわてない》

 

 歩みののろい動物にかたつむりがいるが、フランス人はこれを食べるので人生がゆったりしている、という冗談がある。フランス語では「エスカルゴ」と言い、食事の前菜として6個だされる。珍味なのでフランス旅行した人は、恐る恐る口にしたこともあることと思う。バター、ガーリック、パセリが程よくきいたブルゴーニュ風はなかなかおいしい。殻にあまった汁をバケット(フランスパン)につけて食べるのもまた絶品。
 ほんと、エスカルゴのせいなのか? フランス人は冗談ではなく時間にあわてない。私の友達は約束の時間に来たためしがないし、学校でも先生が遅れてくる。そうした環境になれると、時間ぴったりに行く自分がばかばかしくなってくる。
 大衆レストランでもそうした雰囲気が漂う。まず、席に座ってもなかなかオーダーを取りにこない。頼んだものも時々忘れられる。そして、「お勘定をお願いします」と言っているにもかかわらず、待たされることも。
 われわれ日本人には理解できないところだが、周りを見渡してもそんなことにイライラしているのは日本人くらいなもの。他のフランス人の顧客はのんびりとウエーターがくるまでおしゃべりを楽しんでいる。
 かつてパリに旅行に来たとき、フランス人に英語で質問しても、フランス語で答えが返ってくるので、フランス人のことを少し感じ悪く思っていた。でも、住んでみてわかったことは「フランス人はフランス語を同じように話す人は差別しない」ということ。その点、パリはとても住みやすいところだと思っている。フランス語を一生懸命話していると、フランス人も懸命に聞いてくれる。
 空が大きく、時間がゆっくり流れているこのフランスでは、皆ゆっくり生きている。今年の2月1日から週労働35時間制が発行となった。今までは週39時間制だったのでフランス人は余計ゆったりと時間を過ごせる。
 日本でも、エスカルゴを前菜に3個ぐらい食べる習慣にしてみてはどうか?せかせかした生活が少し落ち着けるかもしれない。




《田子鈴音》
フラワーデザイナー、美研フラワーデザイン学院本部講師
大学卒業後、マスコミ業界に就職。その後、単身ドイツに渡る。
2000年1月からパリ在住。